Friday, September 29, 2023

都市伝説 in the 小説 (Marcus Tsai)

「都市伝説」という言葉を知らない人でも、いくつか聞いたことはあるだろう。今やネット文化の一部で、「きさらぎ駅」といった話はウィキペディアに独自の記事までできていて、もはやネットに疎い人が知っていても当たり前だと言える、そんな魅力的な都市伝説。

きさらぎ駅の舞台は現実の遠州鉄道という人もいる。
辞書では、

現代の語り伝えられている、出所が明確じゃない噂話

というものをなんでも「都市伝説」と呼ぶが、皆さんが思い浮かぶ都市伝説はおそらく

  • ミステリアスで奇抜で、ふざけたような話
  • 内容が不気味
  • 主人公が難局に立っていて、最後は問題解決ならず
  • ほぼ毎回同じパターンなのに、とにかく最後まで読むのがやめられない

などの魅力までついたものではないだろうか。なので今回は、都市伝説じゃないけど、都市伝説の魅力を持った「小説」を紹介させてもらう。

最初に思いついたのは、星新一の『おーい でてこーい』。ある日、村に急に大きな穴ができたという話。村人が「おーい、でてこーい」と叫んでも反響しないくらい深い穴だった。村人はその穴にゴミを全部捨てて、村も世界もその穴のおかげで浄化されたが、ついに穴はとんでもない災害をもたらした。

『おーい でてこーい』が絵本になったバージョン。

そもそも星新一はネットの誕生よりずっと前に小説を書いていたし、『おーい でてこーい』のようなSF小説をたくさん生み出した点では、むしろ星新一のおかげで今の都市伝説があると言っても過言ではないじゃないか。SF小説でさえあれば都市伝説的な魅力があるわけじゃないが、星新一はその魅力を申し分なく生かしてくれたのだ。

次に紹介したいのは、朱川湊人の『昨日公園』 。少年・遠藤は公園で友達のマチと分かれて、その夜マチが死んだと聞かされたという話。遠藤が悲しんで公園に行くと、なんとマチが生きていた日に戻ったのだ。マチを助けようとしたが、今回は別の原因でまた死んでしまう。その日に何度も戻ったけれど、マチを助けられない上、戻るたびにマチの死が酷くなり、更に他の人も巻き込まれるようになって、遠藤は厳しい選択を強いられた。そして30年後、子持ちになった遠藤はまた公園へ来たが、再び思いよらぬ事態に陥ってしまったのだ。

「昨日公園」は『都市伝説セピア』に収録。

この小説は「世にも奇妙な物語」でドラマ化されることもあって、私自身もその話題からこの小説を知ったのだ。「世にも奇妙な物語」というテレビ番組は、このように他にも有名な小説を多数ドラマ化したことがある。

最後に、東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。泥棒の主人公3人は「ナミヤ雑貨店」という廃家に入り込んだところ、外から投げ込まれた悩み相談の手紙を見つけたという話。面白半分に書いた返事を出すと、次々と悩み相談の手紙が投げ込まれて、主人公たちもひとつひとつ返信した。なんとその悩み相談の手紙は全部昔の人からの投稿だが、主人公たちはそれを知らないまま宛先の人たちの人生を変えていったのだ。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。

推理小説でおなじみの東野圭吾だが、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』には殺人が一切なく、推理をするキャラクターも出ない。主人公たちは難局に立ち向かわされた訳でもないし、先に紹介した2つの作品に比べても内容が平和で、どんな点で見ても異色な作品である。それでも、奇抜な世界観が全力全開して、これまでにありふれた不気味なストーリーを期待していた読者に一新した作風で迎えるところは、ナミヤ』の都市伝説的な魅力である。ナミヤ』を「犯人のいない探偵小説」と呼ぶ人もいるが、私は「難局のない都市伝説」だと評したい。

そういえば、城平京原作の、都市伝説をテーマとした推理小説・漫画シリーズ『虚構推理』もあって、本来はそちらも紹介したいと思ったが、その魅力を言い尽くすのに話がどうも長くなりそうで、今回は割愛させていただき、皆さんにぜひ自分で読んで欲しく思っている。

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